2005-05-02
芽吹く
あちらこちらのどの庭にもとっくの昔に一番のりで春を感じ取ったことを誇るかのように開き切ったふきのとうたちが、宿の沢にはまっすぐピンと姿勢よく顔を突き出している水芭蕉、水の中にはキラキラと太陽の光を浴びるクレソン、そして宿の庭にはハーブや野の花、木の芽が芽吹く季節にすっかり移り変わった。辺りを見渡すと、自然の生命のエネルギーが呻き立てる音でも伝えてくるかのような強さと勢いが溢れている。改めて暦の上で5月になったことを思い知った。いっさい人の手を介さないゆるぎのない、奥深く根付いた生命の源のようなものに圧倒され、ますます気持ちがまだ春の手前側に取り残されたままのように感じた。夕日に照らされた木の芽や緑、夕日に染まる大きな空と雲の色の風景をみていてやっと、実際に自分が感じとることの出来る空気感と流れや音に今の季節がぴたりと重なる気がした。道東の夕日の風景はどの季節をとっても好きだが、夕日が沈む頃は一日の中でもこころが落ち着くような優しさと静けさに包まれるように思った。




2005-02-25
歓迎の雪
雪今年はまとまった量の雪の降る回数が少なく冬を過ごした!という実感が薄く、いつもの年だったら餌台もすっぽり埋もってしまうほど雪に深く覆われるはずなのに、その雪深さも感じることのないまま3月を迎えようとしていた先日、久しぶりにまとまった雪が降った。除雪作業をしなくても済むから雪はあまり降らない方がいいと言っていた宿主だったが、降れば降ったでうれしくなってしまうらしい。あっという間にまっさらの上等な雪で辺り一面覆われた。餌台が埋まってしまわないうちに大腿部まで足を取られながらパンやひまわりの種、かぼちゃの種、オレンジ、脂身までフルコースで差し入れした。そして、張り切って雪かき作業にかかった。除雪歴3年目でつかんだペースは10cm1時間。20cm程積もったので2時間を見積もり気持ち良い汗をかいた。翌朝は早朝、雪面がリセットされ誰も踏み入っていないはずである森の中を散歩をした。スノーシューで足形の形跡を確認しながら歩くのを楽しんだが、あまりに気持ちよくて思わずダイブして身体ごとすっぽり自分たちの形を雪の上に残してしまうくらい歓迎の降雪となった。



2005-02-16
冬と春の間の季節
雲ひとつない青色の空がどこまでも広がる眩しい午前中、「こんなに天気がいいからちょっと散歩して外で休憩しよう!」と宿主に誘われた。ビスケットと珈琲を沸かせる道具だけを手早くリックに詰めスノーシューを履いて早速裏の森の中(美留和ヶ丘)に入ってみた。空気の色と質感が明らかに冬とは違う感じがした。鳥の鳴き声と自分たちの足音だけしか耳に入ってこない静かな森の中はいつものように爽やかで、思わず吸う息が深くなる。まるで上白糖のように思えてくる雪の中に自分の足跡をつける時の足に伝わってくる雪の感触と音は何とも言えず心地よく「サイコー気持ちいい~」と何度も言いながら歩く宿主だった。兎ときつね、鹿の足跡も気持ちをはずませた。沢で何かを必死に食べている鹿とすれ違うその度にドキドキしながら、私有地、通り抜け禁止!の看板を想像してしまい「すいません、ちょっと通らせて下さい・・・」という気持ちで、そっーと通り抜けた。獣道を形造っている鹿の足跡に「こんなに雪深いところを食料を探すために歩き回るわけだからりっぱな筋肉がつくはずだよなあ」と背を丸めて水を飲んでいる鹿を遠くから観察した。軽く1時間歩いて休憩。珈琲を片手にホッと空を見上げると真っ青な東の空にほんのりうっすら上弦の月が浮かび、頭の真上の空には虹がかかっていることを見つけ、とても得した気分になった。


