2004-05-03
大窓からの風景
ここ美留和の日の出は午前4時過ぎ。朝が明るくなるのが随分と早くなり、陽がすっかりと昇り、高い空から眩しく照らし始める6時頃には自然と目が覚めてしまう。今朝も自然な目覚めとともに朝の準備をしようとホールに入ると、既にお客様がお一人大窓越しのテーブルにかけて朝の風景を眺めていられる様子だった。熱い緑茶を一杯、テーブルにそっとお持ちしてみると、お客様は大窓から眺める風景をスケッチされているところだった。えんぴつの黒色だけで描かれたその絵からは日頃あまり気にすることのない細部までが捉えられ、何より普段は意識することのない光と影の部分、白と黒だけで木の丸みや沢の流れから雲のふわふわした感じまで描かれているその風景は、いつも見ている風景なのに、見えていなかったものが見えてくるような現実感や存在感があった。こんなにじっくりと木々を見たことはなかったなあ・・・とお客様の風景画から実際の景色を確認するかのようにゆっくりと眺める宿主だった。すっかり雪がなくなり雪解け水で流れの拡がる沢には開ききったふきのとうといつの間にかすっと水面から顔を覗かせている水芭蕉のつぼみがあちらこちらにあった。チェックアウト時に「色をつけてみたよ。」とさらりと一言、見せて下さった。色のついた水彩画の風景はいつも何気なく見ている風景と重なる気がした。

2004-04-15
カメラマン・・・?
美留和はあちらこちらで雪溶け水の軽やかな音が響くようになり、水の流れが作る沢の周りはたくさんのふきのとうの淡い黄緑で彩られている。周囲の山や畑はどんなだろう?とカメラとおにぎりを持って出かけてみた。屈斜路湖が見渡せる峠の残雪の中にポツンと立っている1本の木に惹かれたのか早速撮影を開始する宿主。湖にはまだ凍っている部分と溶け始めている部分とが重なり合って、湖面いっぱいに幾何学的な大きな模様が拡がっていた。眺めるものや場所は同じでも季節が移り変わる時の景色や、その景色の中に太陽や月や星が加わったり、おもしろい形の雲が加わったりするだけでも、毎回初めて出会ったかのような新鮮な風景にわくわくしてしまう。ここ道東には、全くの素人に、絵を描いてみたいと思わせたり、写真を撮ってみたいと思わせるような風景や景色が数え切れないくらいたくさんあると思う。峠を下り、初めての道路に車を走らせたことろで、好きだな・・・と思う畑と木と空が広がっていた。通りすがりの偶然の道端に、お気に入りの風景のある場所がまたひとつ増えた。



2004-04-07
えぞふくろう
まだ夜が明けきらない薄暗い朝方、宿主に揺り動かされて突然目が覚めた。「宿の大窓にふくろうがぶつかって倒れてる・・・」、夢の続きをみてるかのように、ねぼけた状態で外に目を凝らすと、ぴくりともせず倒れたままのふくろうらしきものがいた。「ホウ・・・ホウ」と文字通りの泣き声を間近に感じた宿主はカーテンの外をずっと眺めていたとのこと。しばらくしてバサバサと飛んでいくふくろうを確認したかと思いきや、大窓にぶつかる大きな音がしたと言う。砂糖水をあげてみようか・・・何かの生肉も近くに置いてみようか・・・など、あれこれ思案してみたが、近づくことで脅かして余計に体力を消耗させてもいけないからと、しばらくそっとそのまま見守った。30分くらいするとぴくぴくと時々身体が動いた。がんばれ!と思いながら引き続き見守った。夜が明けて辺りが明るくなる頃、身体を起こして、まず50cmくらいの雪の丘に飛び上り、こちらの方に振り返り、自分の具合と体調を確認するかのように、そのままじっと休んでいる様子だった。何かエネルギーに代わる餌をあげた方がいいのだろうか・・・と迷っていると宿の木に飛んで止まり、そして空に向かって飛び立っていった。


