2004-02-02

野鳥観察2年目

宿の大窓越しの積もり積もった雪が大分圧縮され、再び外の風景の見渡しが良くなった。今年も魚焼きの網に牛の脂を置きネットで巻いて針金で固定し、白樺につるした。都会の野鳥たちに比べ餌に不自由しないだろう美留和の野鳥たちは脂身のごちそうにまでありつけて贅沢だ。スノーシューを履き、埋まってしまった餌台の屋根の部分だけでも掘り起こしてみようと悪戦苦闘した。やっと屋根部分が見えてきたぞ!と思いきや、雪の重さに耐えられず、つぶれ、壊れていた。一瞬がっかりしたが、すぐに気を取り直して屋根の修理に取り掛かった宿主。餌を置いて間もなく野鳥たちがやってきた。やはり今年も一番のりはお馴染のカケスだった。修理し復活した餌台にはシジュウカラもやってきた。野鳥観察2年目。他の色んな野鳥たちとも少しずつ顔なじみになれるといいなあと思う。


2004-01-23

兎とキツネのあしあと

朝、宿の庭に兎の足跡が、遠くの方でキツネの足跡とクロスしているのを発見した。お昼過ぎには買い出しの帰り道、長い長いキツネの足跡を発見した。昼間はなかなか見かけることがないのできっと夜に散策を楽しんでいるのだろう。インドに伝わる説話を思い出した。むかし、狐と猿と兎が仲良く暮らしていた。ある日、老人に姿を変えた帝釈天がやってきて「何か食べ物を下さい」といった。そこで、その老人のために、狐は河から新鮮な鯉を、猿は木に登って珍しい花や実をとってきて、差し出した。ところが兎は何もとってくることができない。かわいそうな兎は、狐と猿に「薪を集めて下さい。」と頼んだ。そして「どうか私を食べて下さい。」と言って燃えさかる薪に飛び込み死んでしまった。老人は帝釈天の姿に戻り、薪を取り除いて亡骸を抱き、「どうして、ここまで思い詰めたのだろうか」といった。そして帝釈天は、兎の優しさを後世に伝えるため、兎の姿を月の中に残したのだという。いつか月明かりの雪原で兎とキツネの仲良く遊んでいる姿に遭遇できるといいなあ・・・。


2004-01-17

月と雪と朝焼けと・・・

夜明け前、目がさめ、明らかに昨日とは違う気配。青い灯りがカーテンの隙間から差し込んでいた。そーっと覗いてみると、薄暗い青い上の寒空に月がぽっかりと浮かび、その月を追いかけるように遠くの空には朝焼けが、そしてなだらかな雪原が広がっていた。長い悪夢から覚めたような、遭難して流され無人の島に辿り着いたような、昨日とは全く違う静かな光景が広がっていた。あたり一面のいくつも連なるなだらかな雪の丘には何者の足跡や形跡もなくただただ真っ白。昨日までの風と嵐と闇の中に置いてきたもの全てが丸ごと、木々や植物たちと共に冷たい氷点下の世界に封印され、春までの深い眠りにつかされているような気がして、なんだかとても大きな優しさと強さを感じた。こころの中にも降り積もったような気がして、月を前に大きく深呼吸をした。月と雪と朝焼けと、なんて贅沢な朝なんだろう、といつまでも眺めていたい気分になった。