2004-01-23

兎とキツネのあしあと

朝、宿の庭に兎の足跡が、遠くの方でキツネの足跡とクロスしているのを発見した。お昼過ぎには買い出しの帰り道、長い長いキツネの足跡を発見した。昼間はなかなか見かけることがないのできっと夜に散策を楽しんでいるのだろう。インドに伝わる説話を思い出した。むかし、狐と猿と兎が仲良く暮らしていた。ある日、老人に姿を変えた帝釈天がやってきて「何か食べ物を下さい」といった。そこで、その老人のために、狐は河から新鮮な鯉を、猿は木に登って珍しい花や実をとってきて、差し出した。ところが兎は何もとってくることができない。かわいそうな兎は、狐と猿に「薪を集めて下さい。」と頼んだ。そして「どうか私を食べて下さい。」と言って燃えさかる薪に飛び込み死んでしまった。老人は帝釈天の姿に戻り、薪を取り除いて亡骸を抱き、「どうして、ここまで思い詰めたのだろうか」といった。そして帝釈天は、兎の優しさを後世に伝えるため、兎の姿を月の中に残したのだという。いつか月明かりの雪原で兎とキツネの仲良く遊んでいる姿に遭遇できるといいなあ・・・。


2004-01-17

月と雪と朝焼けと・・・

夜明け前、目がさめ、明らかに昨日とは違う気配。青い灯りがカーテンの隙間から差し込んでいた。そーっと覗いてみると、薄暗い青い上の寒空に月がぽっかりと浮かび、その月を追いかけるように遠くの空には朝焼けが、そしてなだらかな雪原が広がっていた。長い悪夢から覚めたような、遭難して流され無人の島に辿り着いたような、昨日とは全く違う静かな光景が広がっていた。あたり一面のいくつも連なるなだらかな雪の丘には何者の足跡や形跡もなくただただ真っ白。昨日までの風と嵐と闇の中に置いてきたもの全てが丸ごと、木々や植物たちと共に冷たい氷点下の世界に封印され、春までの深い眠りにつかされているような気がして、なんだかとても大きな優しさと強さを感じた。こころの中にも降り積もったような気がして、月を前に大きく深呼吸をした。月と雪と朝焼けと、なんて贅沢な朝なんだろう、といつまでも眺めていたい気分になった。


2004-01-15

すごい、すごい!ブリザード!

昨日からの大荒れの天気で弟子屈も隣接する市町村へと通じる全ての道路が通行止めで陸の孤島となった。今朝は宿が丸ごとすっぽりと雪の中にあった。宿主は早目にご予約頂いていたお客様に状況を説明し、昨日、今日と明日の宿泊をこちらから断わらせて頂いた。こういう自然の厳しい部分の現実は、言い訳する余地もなくすっかりそのままを受け止めるしかないことを思い知らされた。人間の頭で、手で、何でも操作できてしまうような錯覚と思い込み、便利さに埋もれたような中で生活していることを当たり前のことのように思ってしまっているような自分たちが、こういう全く抵抗することの出来ない自然の凄さの現実を目の当たりにすると、こころが震えた。そういう中での雪かきは、もう冷たくて、痛くて、寒くてどうしようもないのだけど、簡単なことばかりではなく大変なことがいつも背中合わせになっているという現実をありのままに受け止めて生きる練習をさせてもらってるような気もした。そんな中、小さい頃の今日みたいな台風のある日、エレクトーンの大きな椅子とオルガンの椅子を並べたその上をタオルケットで覆いかぶせて小さな部屋を作り、その中に弟、妹と3人で手を握り合って入り、うずくまっていた日のことがなぜか急に思い出された。怖いのだけどうれしいようなそんな気分だったような気がする。

温泉を引き上げるポンプが止まり、すっかり凍ってしまった露天風呂

1/16の夕方、やっとやっと除雪車が来た駐車場前。ありがたい。宿主は車一台分が通れるスペースの除雪。3時間かかった。

大窓部分の除雪をしているところ

鳥の餌台も何もかも雪の中。積雪2m20cmくらい。

停電でロウソク2本とランタンで灯りをとるホール