2003-11-19
サルルンカムイ(湿原の神)
食材の買出しに出かけた途中、今年も道沿いの越冬地に既に50羽くらいの丹頂がやってきていた。立っているだけのその立ち姿さえも絵になるような丹頂に惹きつけられ、思わず車を止めた。佇んでいるだけで華になるような、眺めているだけで香ってくるような雰囲気が漂う。天を仰いで鳴き合い、そして舞うことによって意志の疎通をはかっている様子。歩く姿はまるでバレエダンサーのよう。ひとつの舞台を観るかのようにしばらく見入ってしまった。その間新しく三羽の丹頂が加わった。人間(ひと)の作り出す芸術品も素晴らしいけど、神様の作られた自然の中の芸術のようなありのままのその姿は理屈抜きでこころが奪われてしまう。神様の作られた人間(ひと)も、色んなものを削ぎ落としてありのままの姿になれればもしかしたら丹頂たちに近づけるのかもしれない。戻る車に向かう小道、顎をひいて首を長くし、すーっと綺麗な姿勢で歩きたくなるような気分になった。


2003-11-06
そろそろ冬支度
宿の大窓から見渡せる木々の葉っぱがいっせいに落ち、樹がむき出しになった。雪が降るのを待っているかのようなこの時期、美留和の砂利道にも道路とそうでない部分の境目にポールが立てられ、いつ雪で道路も畑も当たり一面白く覆われても大丈夫なように冬支度が始まっている。日の入りが午後4時過ぎとなり、空が星屑で覆われるまでの長い夜のひとときを、小さな電球でささやかに彩ってみようとお宿かげやまの庭も冬支度。冬の寒空の下に灯る光は気持ちをほんわかさせてくれるような暖かみがある。


2003-10-22
晩秋の昼下がりに
「行く秋」とは良く言ったもので、木々の葉っぱがひらひらといっせいに落ち始め、ここ数日であっという間に樹の部分が目立ってきた。お昼時、近くの牧草地では、牛さんたちが寝転がり日向ぼっこをしながら最後の紅葉を満喫しているかのようなのどかな風景に出くわした。紅葉も終わりにさしかかり、雪虫(ゆきむし)も飛んでいた。雪虫の飛ぶ姿が雪に似ていて、この虫が飛び始めると、冬がもう、すぐそこまでやってきていることを北国の人たちは感じる。早いもので美留和に越してきてそろそろ一年。全部の季節を通し過ごしてみて、秋の深まった目の眩むような紅葉のあでやかさに包まれて時を過ごせる贅沢に感謝しつつ、でも、やはり辺り一面真っ白で凛として時が止まっているかのような静かな冬の景色が一番好きかな・・・と独りごちて今年最後の秋の景色を惜しみながら冬の気配を感じとっている宿主でした。
