2006-03-20
春を探しに・・・
じわじわと雪解けが進み、積もった雪の高さが一気にしぼんでしまった美留和の風景に雪解け水の流れるせせらぎの音が加わった。春近し・・・とひらひらと軽い雪が漂う中を散歩した。「あっ、いるいる!」とまるで小動物のような感じのするふきのとうたちが沢のところどころで地面と雪を押し上げて真っ直ぐに顔を出していた。この淡いモスグリーンの色合いとかわいらしい形が相乗的にふきのとうらしさを強調してるようでふっと笑えた。良いことが起きても悪いことが起きても時は時の下流に向かって確実にこともなく流れているなか、変化を求めがちで変わってしまうものが多いけれども、変わらないものがあること、変えられないものの強さと安心感をふきのとうたちは静かに語っているように思えた。近所の馬場でまどろんでいるらしいホッパーたちにも逢いに立ち寄ると、脱走癖のあるポニーのさくらが一番先に我よ我よとすりよってきた。ホッパーもチェリーもやってきていつの間にか完全に遊ばれている宿主だった。



2006-01-07
雪見露天風呂の樹氷と夕日と月と・・・
時の一刻一刻の刻みを実感できないまま真っ白な風景を迎え、再び雪の季節が巡ってきた。今朝の美留和は氷点下18℃。青い空を背景に樹氷が際立ち、朝の陽の光に反射した空中のダイヤモンドダストがキラキラと眩しい。にぎやかだったあれだけ多くの生命が雪に包まれ、音のない静かな世界が拡がる風景は実際に目でみえているわけではない遠く深い土の中の漠然とした命のエネルギーの存在のようなものに対して果てのない思いにつまされる。そして、それと同時に、一瞬の思いを凍結してしまっているようでもあり、まるで永い時と一瞬が時空を越え尺度を変えてピタリと重なるかのような安堵感に似た優しさも拡がる。氷点下での風景は夕日も月も星空も・・・どれをとってもどの季節のそれよりも一層際立っているように思える。



2005-10-22
そろそろ・・・
宿の庭は黄色、オレンジ、山吹色、茶色や赤などカラフルな葉っぱで敷き詰められ、木々の幹や枝のむき出した割合が多くなり、日に日に遠くの景色の見通しがよくなってきた。晩には、ほーほー・・・と遠くない暗闇のどこかしらから聞こえてくるふくろうの鳴き声、昼には空高くVの字の体制で北から南に向かう白鳥の群れから聞こえてくる鳴き声や宿の壁をコツコツ・・・コツンコツン・・とキツツキの仲間の鳥がつつく音も響く。朝には餌台に入れておいたパンを一番のりでついばみにくるかけすの様子も目にすることが多くなった。雪むしも飛ぶようになった。北海道の人々はこの虫を目にすると、そろそろ雪の季節だなあ・・・と思う。外に出てほわほわ浮遊してる雪むしを、まさかと思いつつ掴む素振りをしたらなんと手の中にすっぽりと入った。そっと手の平を開いてみると、本当に虫(昆虫)であることをまじまじと確認し驚いた。くっきりした雪の塊のようなものをお尻の部分につけた蚊のような虫だった。たんぽぽの綿のように浮遊するそれは、何か植物の産物だろう・・・と数年信じて疑わず、どうしても虫だとは思ってもみなかった。雪むしの飛んでいる光景は淡くはかなく静かで、それと同時に、冷たくも寒くもなく、無機質な感じがした。ぼんやり眺めていると雪むしの風景の奥に周囲の家々の明かりが小さく灯る雪の季節の光景が浮かんできた。そろそろ降るんだろうなあ・・・とすっかり晩秋に移り変わった空を見上げた。


